絶縁双方向技術 ヘッドスプリングの得意とする電力変換器技術の一つに『絶縁双方向技術』というものがあります。 これは、1次側↔2次側を電気的に絶縁しつつ、1次側から2次側、逆に2次側から1次側への両方エネルギーの流れを小型・軽量な構成で可能とする技術です。 この技術は、Dual Active Bridge(DAB)方式と呼ばれ、蓄電システムの双方向パワコンや、次世代電気自動車の内部の電力のやり取りなど、直流と交流、または高圧系直流と低圧系直流等、異なる形式の系統を安全かつコンパクトにつなぐ際に特に必要とされています。 とりわけ、安全に対する要求水準が厳しい自動車業界では、電気的絶縁性能が求められることが多いため、電気自動車を非常時の電源として用いるVehicle-to-HomeやVehicle-to-Grid(総じてV2X)に用いる定置型や車載タイプの充電器に、この絶縁双方向変換技術が必要不可欠となっています。また、途上国などの無電化地域では、太陽光発電や蓄電を組み合わせたマイクログリッドを導入するにあたって、輸送経路が未舗装道路しかないなどの事情から、システムをできるだけ軽いユニットに分割して運びたいという要求があります。このような状況では、DAB方式を用いた、コンパクトな電力変換ユニットを組み合わせた構成が、非常に有効となります。 まず、絶縁しながらエネルギーは流すというのはどういうことか?それは、エネルギーを電気のみの形でやり取りするのではなく、途中でトランスを挟み、電気→磁気→電気の形で送るということです。こうすることで、1次側と2次側を電気的に安全に絶縁しつつエネルギーのやり取りをすることが可能となります。 従来から太陽光発電などで使われてきた絶縁方法は、50/60Hzの電力系統と太陽光発電システムの境目に鉄心に銅線を巻き付けた、巨大な重たい外部トランスを設置する方法です。これに比べ、ヘッドスプリングでは、変換器内部に次世代パワー半導体の高速スイッチング技術と高周波トランスを活かした、高周波絶縁方式を用いており、それにより、絶縁に必要な部分のサイズと重量を大幅に減らすことできます。次に、なぜ双方向の変換技術が必要なのか?これは、システム全体の構成をシンプルかつ小型化するという目的があります。 例えば従来の蓄電システムや無停電電源装置(UPS)では、交流電力系統から直流電力を作り蓄電池を充電する充電器と、停電時などに蓄電池から電力を取り出して交流に変換するインバータが、それぞれ片方向のユニットで別々に構成されていました。これを双方向の電力変換ユニット一つで構成することにより、システム全体の小型化だけでなく、内部の信号線の数を減らすことができるなどの設計・製造上のメリットも得られます。 絶縁双方向化のメリット1 小型化・安全性の両立 高周波絶縁技術により大型のトランスが不要となるため、安全性を保ちながら小型化が可能に。 絶縁双方向化のメリット2 機器内部構成の簡略化/b> 双方向化により充電&放電機能を1台で実現可能となるため、機器全体の小型化、制御線の簡略化、デバイスやセンサ類の数量削減が可能に。 DAB方式による絶縁双方向技術は、ヘッドスプリングの直流回生電源『biATLAS-D』シリーズにも使われており、単体5kW容量の直流電源/電子負荷兼用で、19インチラック1.5Uというコンパクトサイズを実現しています。